漢語角活動レポート

2008.10.5 第60回

 今回はスペシャルゲストとしてサッチーこと野村沙知代さんにお越しいただき現代の日本の状況を中国と比較しつつお話しをして頂きました。その他にも多数のゲストによる様々なお話があり、第60回の漢語角にふさわしいにぎやかな回となりました。お忙しい中、公園という今まで体験した事のないような場所でお話をして下さった野村さんに改めて御礼申し上げます。

<野村沙知代さん>  現代の日本について
 冒頭では、戦後63年経つけれども未だに日中の間では問題ばかりが取り上げられ双方がウジウジとしていている、これからは新しい気持ちで良い関係を作って行ってほしい。日中、中日という括りではなく、世界みんなで仲良くして行こう、という気持ちが大切だということをお話下さった。

 現代の日本はとても荒んでしまい、殺伐としてしまっている。親子という関係が壊れてしまっていて、何が大切なのかを分かっていないのではないか。中国では基本的に親孝行で、年配の方を敬う事があるけれど、今の日本には無くなってしまっている。 女にとっては何が一番大切なのか、それは自分のお腹をいためて生んだ子供である。親子という関係が一番大切なはずなのに、現代では親が子を殺したり、子が親を殺したりしている。最近の女性は子供を生んだ後すぐ何をするかと言えば、託児所を探すのだと言う。子供を預けて仕事に復帰する準備の為だ。野村さんはなぜそんなにすぐに仕事に戻るのかと、ある女性に聞くと「旦那の給料では足りないから」と答えたという。しかし昔はその中で母親が何とかやりくりしながら生活をしてきていたのだ。 そんな事するなら子供を生むんじゃないよ!と、親子の大切さを力強く語って下さった。

歯に衣着せぬその話し振りと人柄のため、人間関係に困った方や親子関係に問題のある方々から相談を受ける事が多いという。その1つのエピソードに、こんなものがあった。ある親子の子供が引きこもりになってしまい、部屋から一歩も外へ出てこない。ご飯も部屋の前に奥とそれを食べて、また部屋の外に出しておくだけ、という生活になってしまった子。その母親から相談があり、家に赴くと「少しの間、この子を部屋の外に連れ出してほしい。ずっと部屋に閉じこもっているから、部屋の掃除をしてやりたい」との事だった。野村さんは頭にきて戻って来てしまったという。野村さんならば、部屋の戸を蹴破って入って連れ出してくる、とおっしゃっていた。親と子でありながら言うべき事をしっかりと言ってやれない親。よくある様な事かもしれないが、現代の日本の親子の関係がよく見て取れるエピソードだと感じた。

 野村さんのお話を聞き、自分と自分の親、また自分がこれから親になる時の事を改めて考える良い機会となった。また親子関係だけでなく、全ての関係と同じ事で日本と中国との関係も、今以上に暖かみのある関係が築いてゆけるよう活動をしてゆきたいと感じるお話だった。
<早稲田大学教員 木下先生> 鑑真プロジェクト
 木下先生が教えている学生の約6~7割が中国人の学生の為、中国人学生の意見を聞く機会が多くあるという事だった。その中でよく聞くのが、大学で沢山勉強をし良い成績を取っていても、日本の企業が中々採用をしてくれない、という事だそう。実際企業側に聞いてみても、外国人採用には消極的な企業が殆どだった。そこで企業と中国人学生との交流の場を研究会として設け、話し合う機会を作るなど、活動を行って来た。そのような活動の中で、より中国と日本が交流していければ、という点から鑑真プロジェクトというプロジェクトを立ち上げた。これはどれだけの苦労を乗り越えて教えを伝えるために日本に来て教えを説いた鑑真の思想を組んで名付けられたプロジェックとで、日本から日本人学生と中国人学生を募り中国へ派遣して現地の方々の交流をするものだ。日本人学生と中国人学生は船で大阪から上海に行き、現地のいくつかの大学で交流をした。 学生達は今回のプロジェクトを通して、自分たちがメディアから聞いていて持ったイメージと違った、と語ったそう。同じ人間なんだ、という事を改めて感じたという。また日本人学生は、中国人学生の積極性や自分の意見をしっかり持っている点、日本人に比べ英語をとても上手く話せる事などに衝撃を受け、またそういった意味でもとても良い経験になったのではないか、との事だった。
<中国記者 王さん> 北京オリンピックについて
 今回の北京オリンピックを現地で取材をしていた王さんが、感じた事をお話して下さった。それは北京オリンピックにおいての中国が期待していた点と世界が中国に期待していた点が違ったという事。世界は中国がオリンピックという世界的祭典を経験する事でより民主的に開いて行ってくれる事を期待していたが、中国側の期待は違った。アジアでのオリンピックは過去に東京オリンピック、ソウルオリンピックとあったが、日本も韓国もオリンピックを経験して発展をした。中国は北京でオリンピックをする事で、中国の経済発展、国力の発展を一番に期待していたのだという。その違いで、聖火リレーの問題などの方面で衝突があったのでは無いかとの事だった。肌でオリンピックを感じた方の意見だったのでとても興味深く、北京オリンピックの良かった面と悪かった面を改めて感じた。

<芹澤礼子さん>
 芹澤さんは四川大地震の被災地に駆けつけた際の写真を持って来て下さった。四川の成都で日本語を教えていらっしゃった芹澤さんは、震災後心配で成都を再度尋ねて行った。その際のエピソードでとても面白かったのが、震災のDVDを販売していた、というお話だ。震災があった事を復興までは観光に使ったりDVDを作って商売にするという所は、実際はまだまだ苦しい生活をしている人が殆どであるはずだが、たくましさを感じる面白いお話だった。また、NGOが被災地の復興に参加しており、そのNGOの方々は瓦礫を大型機器で掘り起こしたりする事は出来ないが、手で少しずつ作業をしていたという。そうする事で瓦礫の下からは、写真や大切にしていたもの等が沢山出て来て、それを受け取った被災された方々はとても喜んでくれるのだそう。地道で大変な作業だがとても素晴らしい活動だと感じた。

 その他も沢山の方がお話を下さいました。 小尾羊社長 王明琳さんは民間レベルでの活動の大切さと、自分たちも少しでも力になりたいとお話がありました。 福旦大学日本校友会会長の周偉嘉さんも、20年前に上海の公園には日語角があり、そのような活動が脈々と広がりこの池袋公園でもまた日中交流の新たな1ページを開いてる、この漢語角の今後の発展を期待しているとお話を下さいました。
 最後に、漢語角に何度も参加されていたホッペ・アニャさんが、留学期間を終えドイツに帰国される事になり、あいさつがありました。語学や大学での勉強もとても有意義だったけれど、それ以上に同じ大学に来ている各国の留学生と文化や習慣の違いを感じながら共に生活をし語り合った事、一人暮らしを始めて、日本の本当の文化や生活を体験した事が、何よりも良い勉強になりとても良い経験をする事が出来た、との事でした。日本語も中国語も話す事が出来、一人でも漢語角に参加したりと、とても熱心な素敵な方でした。ドイツに帰っても日本での経験を生かし、さらに頑張っていってほしいと思います。

 60回を数える漢語角は本当に多くの人から成っており、沢山の方々に支えてもらっているのだと感じました。そこに参加出来る事が有り難く、これからも日中の事に興味を持ち、勉強を進めて行きたいと思いました。

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(C)People's Daily
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