漢語角活動レポート

2008.9.24 第57回

 朝夕はようやくしのぎやすくなりましたが、皆様いかがおすごしでしょうか?第57回、漢語角の報告書は私山崎がお届けいたします。今回は3名のゲストスピーカーをお迎えいたしました。

★まず始めに9月9日日本僑報社より『日中国益の融和と衝突』という本を出版された関東学院大学教授の殷燕軍先生にお話頂きました。

“日中間には歴史問題を初め未解決問題が多く横たわっているが、現在直面している問題は、より現実的な国益に関する衝突だと言えるだろう” 日本在住十数年になる先生の目からみた現在の日中間が抱える問題について、率直に忌憚の無いご意見をうかがう事が出来ました。 現在の日中関係はお互いの利益の為に妥協点を探る必要があるのではないかと先生はおっしゃっています。またマスコミの日中関係にもたらす影響の大きさについても言及されていました。このように比較的固い取っ付きにくい題材ではありますが、短時間にわかりやすく要点をお話頂きました。 興味の有る方は是非『日中国益の融和と衝突』をお読みください。

★さて、二人目は中国・東北師範大学特任教授、慶応大学講師の張明傑先生をお迎えいたしました。先生は『近代漫游記』と題した著書を中国で出版されています。これは明治大正昭和の日本人思想家が訪中した際の旅行記を中国語に翻訳されたものです。このシリーズは既に10冊を超え年内にはあと2冊出版されるそうです。来年以降に第二弾としてまた10冊ほど出版予定だという事です。芥川龍之介や徳富 蘇峰など著名人の旅行記を通し、明治よりの日本人の中国人に対する認識を探る事ができ、本国でも大変に大きな反響を呼んだそうです。また、中国を訪れた日本人が著名人だったことから、中国でも有名人の自宅に招かれる機会も多く、当時の中国の一般庶民が知り得なかった富裕階層の生活を垣間見る事が出来るなど、そういった方面での資料的価値も高く評価されているそうです。先生がこれまでに収集された資料はおよそ300にも渡るそうです。日本中を探しまわり、高いものになると1冊10万円を超えるものもあるのだそうです。翻訳にあたり苦労なさっている点としては、専門知識のある翻訳者の不足をあげていらっしゃいました。

★最後に張明傑先生とともに翻訳にあたられた横浜国立大学講師の劉紅先生にお話頂きました。劉紅先生の訳された「徳富蘇峰著、近代漫游記、七十八日日記」は主に旅行記と感想文の2つの部分に分けて考えられるそうです。感想文の部分は当時の日本人の中国人感、外国人の目を通し当時の中国の状況を知る事ができ大変興味深いとおっしゃっています。また当時の日本人の漢文能力の高さに非常に驚かされたそうです。旅行記としてみたときは、訪れた各地の描写が大変細かく絶妙で、自分でも訳しながら、どんな所なのか行ってみたくなったそうです。そういった意味からガイドブック的な役割も果たしており、大変楽しく読めるので、皆さんも読んでみて下さいとおっしゃっています。私も少し拝読させて頂きましたが、とてもおもしろく、語学力の不足を痛感しながらも是非読んで見たいと思いました。

 張明傑先生、劉紅先生共に翻訳作業の苦労として、方言についてあげていらっしゃいました。辞書にも載っていない言葉を訳していくのは途方も無い労力を伴う大変な作業だと思います。劉紅先生は、翻訳の作業には決して、“これで良い”という満足出来る瞬間が無いのだとおっしゃっていました。何度直してもまた直したい所が出て来てしまい、完璧だと思える文章は中々書けないものだとおっしゃっていたのがとても印象的でした。まさに“活到老、学到老”なのだと実感いたしました。

 皆さん、いかがでしたか?今回の漢語角もまたとても有意義なものとなりました。この活動は、年齢、性別、職業、人種を問わず中国語を勉強した事のある人、これから勉強したい人、中国に興味のある人があつまりおしゃべりを楽しむ場です。どうか興味のある方は気軽にお立ち寄りください。多数のお越しを心よりお待ち申し上げております。それでは皆さんまた次回お会いしましょう。下次見。

活動のご案内
 戻る
(C)People's Daily
運営:(株)アイキューブ